みなし解散とは?件数4.8万件の実態と教訓
みなし解散の制度としくみを解説し、4.8万件におよぶみなし解散のうち、実際に営業リストとして使えるのはわずか0.6%だったという営業GO!のDB実測値を検証します。
「みなし解散」という言葉を目にして、実際にどのくらいの数の会社が対象になっているのか、そしてその情報が営業リストとして使えるのか気になった方に向けて解説します。休眠会社の整理案件を探している営業担当者の方だけでなく、自社や取引先の登記状況を確認したい経営者の方にも役立つ内容です。
みなし解散とは何か
みなし解散は、会社法にもとづく制度で、最後の登記から12年間まったく登記の変更がない株式会社(休眠会社)を、法務局が職権で解散したものとみなす仕組みです。対象になると法務局から事前に通知が届き、一定期間内に「まだ事業を続けている」旨の届出や必要な登記を行わなければ、自動的に解散したものとして扱われます。
会社をたたんだわけではなく、代表者の交代や役員の重任登記などの手続きを長年放置しているだけのケースでも対象になります。そのため、実際には事業を続けている会社が、ある日突然「みなし解散」の通知を受け取るということも起こり得ます。
なお、みなし解散となった後も、原則3年以内であれば株主総会での継続の決議によって会社を復活させることが可能です。「一度みなし解散になったら終わり」というわけではありませんが、復活の手続きには相応の手間とコストがかかりますし、3年を過ぎればそのまま清算手続きに移行します。休眠させたまま放置している会社がある経営者の方は、このタイミングを意識しておく必要があります。
閉鎖登記、内訳は約10.9万件
営業GO!が保有する法人データベースで、閉鎖登記が確認できる法人は約10.9万件です。内訳は次のとおりです。
- 清算結了:55,990件
- みなし解散:48,170件
- 合併解散:6,799件
閉鎖登記全体のうち、みなし解散が占める割合は4割強です。単独のカテゴリーとしては清算結了がもっとも多いものの、「登記を12年間放置した結果、法務局の職権で整理された」みなし解散も全体の4割以上を占めており、決して例外的なケースではないことがわかります。
みなし解散48,170社のうち、営業に使えるのはわずか0.6%
ここからが実務上重要な部分です。みなし解散となった48,170社のうち、営業GO!のデータベースに情報が残っているのはわずか296社(0.6%)でした。しかもこの296社について、電話番号・代表者名はいずれも1件も保有していません。
12年以上にわたって登記情報の更新がなかった会社ですから、電話番号や代表者名といった連絡先情報も同様に更新されていない、あるいはそもそもデータとして存在しないのは自然な結果です。「みなし解散が4.8万件もある」と聞くと、休眠会社の整理案件や不動産・在庫の処分ニーズを狙う営業リストとして魅力的に見えるかもしれません。しかし実際には、ほぼ全件が接触不能というのが実態です。件数の大きさだけを見て営業リストの母集団に加えるのは、労力に見合わない可能性が高いといえます。
対照的な例:インボイス登録の取消・失効25,956社
一方で、同じく「事業の変化」を示すシグナルであるインボイス登録の取消・失効は25,956社です。こちらは現役で事業を営んでいた企業自身による任意の届出にもとづくものであり、みなし解散のような長期間の登記放置とは背景が異なります。
インボイス登録の取消は、現役で事業を営んでいる(あるいは営んでいた)会社による任意の届出行為です。それに対してみなし解散は、12年間まったく動きのなかった会社に法務局が職権で下す処分にすぎません。同じ「解散・取消」という言葉が使われていても、背後にある会社の状態がまったく異なるため、営業リストとしての価値も大きく変わってきます。シグナルを選ぶ際は、そのシグナルが「能動的な事業活動の結果」なのか「長期放置の結果」なのかを見極めることが重要です。件数で見ると48,170件と25,956件はどちらも数万件規模ですが、背景が異なるぶん、営業活動における実質的な価値は大きく異なります。
自社が「みなし解散」の対象にならないために
休眠中の子会社やペーパーカンパニーを抱えている場合、あるいは代表者交代後に登記変更を後回しにしている場合は注意が必要です。みなし解散とみなされると、取引先や金融機関からの与信審査、新規口座の開設、契約更新、官公庁調達への参加などの場面で支障が出る可能性があります。事業実態に変更がなくても、役員の重任登記や本店移転登記などは定期的に行っておくことをおすすめします。特に休眠中の関連会社がある経営者の方は、法務局の登記情報提供サービスや商業登記簿謄本で、最後の登記からどれくらい経過しているかを一度確認しておくとよいでしょう。取引先候補の企業についても、登記が長期間更新されていない場合は、実態のある事業会社かどうかを別途確認する材料になります。
シグナルは件数ではなく、到達可能性で選ぶ
みなし解散のケースが示すのは、「件数が多い」ことと「営業に使える」ことはイコールではないという点です。営業リストや企業データを選ぶ際は、そのシグナルの母数だけでなく、電話番号や代表者名といった連絡先がどれだけ判明しているか、つまり到達可能性を基準に見極める必要があります。件数の多いシグナルに飛びつく前に、そのシグナルの母集団がどの程度「生きているデータ」なのかを確認する一手間が、営業活動全体の効率を左右します。
営業GO!では、国税庁の法人番号公表データやgBizINFOなど公的なオープンデータを毎日反映しており、みなし解散のような「動きがあった法人」だけでなく、電話番号・代表者名の保有状況で絞り込んで検索することができます。全国532万件のうち電話番号を確認できた法人は13.1%、代表者名は9.9%です。裏を返せば、電話番号が判明していない法人が約68%を占めるということでもあり、どのシグナルであっても連絡先の保有状況は事前に確認しておく価値があります。件数の多さに惑わされず、保有率という一次情報を確認する習慣が、無駄な架電や送付コストを減らす近道になります。